こんにちは、広報担当の大坪です。
今日は一昔前に大きな話題になった「シックハウス症候群」について、健康の観点から考察していきます。
何が問題となったのか、どう改善されたのか、現代では実際どうなのか?
住宅と健康を考える上での参考になれば幸いです。
日本の住宅建築の変化
日本の住宅は、古来より近代に至るまでの長い間、風通しの良い造りでした。
しかし省エネ化が叫ばれるようになると一転、高気密・高断熱化が進むことになり、様々な物質が家屋内に充満し、それらを吸引した居住者に健康被害が発生。これが「シックハウス症候群」と呼ばれる健康被害です。
シックハウス症候群は英語では「シックビルディング症候群 Sick building syndrome」と言い、日本の住居形態によりbuildingをhouseに言い換えた和製英語です。(海外の方にはSick houseと言っても通じないのでご注意を!笑)
日本でシックハウス症候群が問題視された際には、当然海外で発生したシックビルディング症候群の資料が参考にされました。
WHO のデータでは「シックビルディング症候群の諸症状の根底には、皮膚粘膜の刺激症状、アレルギー症状がある」とされています。
衛生化学の観点からも、シックハウス症候群の原因は化学物質だけではなく、ダニや真菌などの生物学的要因、湿度、心理社会要因、個人の感受性など、様々な要因が複雑に関係していると考えられています。
ではどうすればいいのか?と思いますよね。
結論から言いますと、原因が一つではない以上様々な対策を講じることで総合的に原因を排除する事に尽きるかと思います。
<普段からの対策>
① 化学物質を多く発生する生活用品を持ち込まない。
② 問題となる物質発生源を除去する。
③ 窓開け換気などにより、十分な換気量を確保する。
④ 空気清浄機などの対策製品を使用する。
⑤ ベイクアウト※などの対策技術を実施する。
そして、新築する際には化学物質に関して気をつけることができるポイントがあります。
① 化学物質の放散量を抑えた建築材料を使用する。
② 化学物質の放散量の多い塗料や接着剤の使用を抑える。
③ 安定的に十分な換気量が確保できる機械換気設備を設置する。
現在では新築住宅には24時間換気システムの設置が義務付けられていますが、建坪や間取りなどを考慮して十分な換気量が確保できているか、建築前に設計者ときっちり確認したほうが良いでしょう。
※ストーブなどの加熱装置を用いて室温を上げ、建材、塗料、接着剤及び家具などに含まれる化学物質を吐出させる技術。
シックハウス症候群を引き起こす化学物質
当ブログタイトルにある「F☆☆☆☆」、「フォースター」と読みますが一体何のことでしょうか?
シックハウス症候群の主な原因物質と言われるものの1つに「ホルムアルデヒド」と言う化学物質があり、建築基準法ではホルムアルデヒドを放散する建材の使用面積を制限しています。
ホルムアルデヒドを発散する建築材料は、その発散速度(放散量)に応じて4つの等級に分類されており、その中で1㎡辺りのホルムアルデヒド放散量が0.005mg以下の等級付けがされているものを「F☆☆☆☆フォースター」と呼びます。現在ではほとんどの建築現場でフォースターの建材が用いられています。
ただ、これにより制限されているのは“ホルムアルデヒド”のみであり、シックハウス症候群の原因物質は他にも多数あるため、前述のような多角的な対策が重要なのです。建築基準法によって規制されている物質は、他に「クロルピリホス」があり、居室を有する建築物にはクロルピリホスを添加した建築材料の使用が禁止されています。
<シックハウス症候群の原因とされる化学物質の例>
・ホルムアルデヒド
刺激臭のある無色の気体で、その水溶液をホルマリンという。
・アセトアルデヒド
無色の液体で、合成樹脂、合成ゴムなどの原料として用いられる。たばこの煙にも含まれるため、喫煙によって発生する。さらに、飲酒によって人体内でも生成される。
・トルエン
無色の液体で、医薬品、塗料・インキ溶剤及び洗浄剤などに用いられる。
・キシレン
無色の液体で、内装材等の施工用接着剤、塗料などに用いられる。
・エチルベンゼン
無色の液体で、洗浄剤、有機合成、溶剤、希釈剤などに用いられる。
上記は一部の例ですが、短期の曝露でも目や気道の刺激などの症状が出る場合もあり、物質によっては長期に高濃度を吸引すると肺や中枢神経系への影響や肝臓、腎臓、肺及び眼とヘモグロビンの形成に影響を与えることもあります。
いかに化学物質を用いないか、いかに化学物質を効率よく排除するか、が非常に大切なポイントですね。
最後に ー私たちの健康とはー
健康について、WHO憲章では以下のように定義しています。
“Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.”
「健康とは、肉体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病又は病弱 の存在しないことではない。」
肉体的にも、精神的にも、更には社会的に見ても、全てが良好な状態でなければ、健康とは言わない、ということです。
では住宅が担える「健康」は何でしょうか。
・身体を健康に保つ休息の場
・家族が集まる心の保養の場
・「持ち家」は資産となる
上記のように、住宅は肉体的・精神的・社会的「健康」に力を添える事ができるのではないかと考えます。
家族が暮らす空間、安心できない住宅では健康でいることは到底できませんよね。
“住宅”と言う画一的単語としてではなく、「健康」をはぐくむことができる“家”と言う価値を、施主様と共有し寄り添いながら、造って行きたいと思います。